ナカノブひとりぼっち

(日常はあっけなくデストロイされちまった!)

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雷句誠と小学館は和解しないだろう

雷句誠先生の訴訟を提起する以前に、なぜ和解が行われなかったのか、と聞かれたので、私の推測するところを答えたい。

おそらく、訴訟を受ける小学館としては、和解をしたかったのだが、できなかったのだ。

少なくとも、今回のような訴訟があることを知っていたとすれば、小学館側が和解しようとすることは確実だろう。なんといっても悪い宣伝になるし、賠償金額も大した額ではないからだ。

そして、前々から雷句先生はブログで小学館の仕事は今後受けない、と発言していたのであり、原稿紛失などでもめていた当事者である小学館としては、雷句先生から訴訟を起こされることはおそらく予見できていたはずだ。

もっとも、小学館は、雷句先生側が、今回の事件のように、ネット上で大いに話題となるような態様で小学館への訴訟を提起するという事態が生じることを予測していなかったため、雷句先生との訴訟による影響はかなり限定されたものだと考えていたとか、あるいはそのような事態が生じたとしてもこれほど話題にならないだろう、とたかをくくっていたのかもしれないけれど。

しかし結局、裁判外での和解はなされず、現実に訴訟は提起された。そして大きな(多くは小学館にとっては不本意な)話題を呼ぶに至った。

どうも、和解が成立しなかったのは、雷句先生の側に、損害賠償を求める以外に、訴訟提起自体によって漫画家の待遇を改善しようとする目的があったためと思われる。『本訴は、漫画家が、編集者、出版社から、あまりにも対等でない扱いを受け続けていることに対して、一種の警鐘を鳴らすものである。』などといった訴状の記載、賠償金額の低さなどがそれを示しているように思われる。

また、出版がらみの訴訟は一般にこじれやすいということも指摘される。

以前、ある知財弁護士の方が『どうしても著作者人格権がらみ、出版がらみの訴訟は離婚時の子供の親権訴訟みたいになってきてこじれやすくなっちゃうんだよね。作者にとっては作品や版権ってまさに苦労して生んだ子供みたいなもんだし、それは出版社にとっても同じだし、お金も絡むし』と嘆かれていたことを思い出す。私は作家でも出版社の社員でもないが、その気持ちはよくわかる気がする。



…そんなこんなで、結局、訴訟は提起されてしまった。これからは訴訟でいろいろなことが明らかになってくることと思われる。今まで雷句先生に言われっぱなしだった小学館側の言い分に注目が集まるところだ。

ところで、雷句誠先生と相対する小学館の側は、訴訟となればかなり優秀な代理人を連れてくることと思う。

というのも、小学館の久保雅一キャラクター事業センターセンター長(この人は昔コロコロの編集をやっていた人であり、ポケモンをアメリカに売りに行った人である)はエンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークというNPOの理事を勤められており、当然、弁護士のつながりも豊かだろう。弁護士報酬をけちらなければ、国内でも選りすぐりの弁護士を連れてくるはずである。

もっとも、この訴訟で小学館が争っても得られるものは限られており(もともと雷句先生の側が求めているのは300万円ほどの賠償金に過ぎない)、争点も限定的であり、ブログ上で小学館の編集者をあしざまに罵ったということで名誉毀損か何かで別訴や反訴を提起でもしない限り、弁護士の腕が発揮されるような争点が顕出されるとも思えない。だとしたら、弁論では請求原因についてはすぐ自白し、とっとと判決を求めることに力を注ぐかもしれない。

(7月28日追記:
小野弁護士のブログによれば、今日行われた第一回口頭弁論で、小学館側は、原告側(雷句先生側)の請求につき、事実を認めるという態度を示したというので、結局、上記の『弁論では請求原因についてはすぐ自白し、とっとと判決を求める』というタイプの方策を採ったようだ。

小野弁護士は『潔いというか、そう答弁するしかないというか、拍子抜けというか、何とも複雑な心境ですが、答弁そのものには誠意が見られたと思います。』とコメントされているが、ここ一ヶ月ほどの間、いかにこの訴訟の提起そのものが話題を呼んだかということを考えてみると、小学館が今回取ったこの方策が、訴訟にケリをつけるための方策としては一番てっとりばやくて簡単で遺恨を残さない方策だ、ということは多くの人が認めるところだと思う。

私は、小学館はもう法廷にも出てこないで調書判決になったりするんじゃないかとか、いろいろ考えていたのだが…そんなことはなかったのだね。

今後について小野弁護士は『雷句さん自身が後に続く漫画家のための道しるべになるべく本訴を提起した目的も果たせなくなってしまいますので、本件和解の内容が、後に続くリーディングケースになるような内容の和解内容にしたいと思っていますし、そのために知恵を絞っていきたいと考えています』とされているので、裁判外だけではなく、雷句先生・小学館の双方の間で、訴訟上、訴訟外でもなんらかの交渉が引き続き行われることになるのではないかと思う。『後に続くリーディングケースとなるような…』というのが若干曲者ではないかと思うけれど、事実について争いがなくなったなら交渉もきっとスムーズに進むことだろう。

この訴訟は漫画家にとってのリーディングケースとなっただけでなく、出版社の側にとってのリーディングケースにもなることだろう。そして、訴訟なんて長引いてもいいことはないので、今回の訴訟は雷句先生側、小学館側にとってもよい結末が導けそうだと言えるのではないだろうか。

…しかし、一ヶ月以上前につけたこの記事のタイトルは大外ししたことになるなあ。雷句先生が労働関係訴訟のごとく、徹底的に闘争することで今後の漫画家・出版社間のリーディングケースになろうとしているのかと思っていたんだけど、小学館側の譲歩によって、まぎれもなく今回は和解の一種が成立することになるんだろうからなあ。雷句先生を応援する人が多かったことが、小学館側のこの結論に至るまでに大きな影響を与えていたのだろう。雷句先生の勇気ある提訴がよい結果をもたらしたことはもちろんだけど、小学館が空気を読んだことも重要なケースだったようだ。

というわけで私の予想は大外ししたわけですが、あえて消さないでおきます。恥ずかしい。

罪滅ぼしに、早いうち、雷句先生が次の作品に取り掛かれるようになり、また、小学館の知的財産権等の管理体制が向上するように祈っておきます…)

対して、雷句先生の側の代理人、小野智彦弁護士は、私は知らない人だった。ただ、調べてみたところ、ブログをお持ちで、手品用に日本のコインを加工することが貨幣損傷等取締法違反になるかという事件だとか、それに関連した訴訟としてテレビで手品の種明かしをしたことが不法行為に当たるかという事件だとかを扱われた方のようだ。けっこう変わった事件を好んで扱っていらっしゃる方なのか、それとも来るもの拒まずなのか、あるいは私が知らないだけですごく有名で優秀な方なのか。そして雷句先生とはうまく訴訟で協同できる方なのか(依頼者と代理人がもめるケースも多いが大丈夫だろうか)。

個人的には、小学館の法務・ライツ局は、雷句先生との訴訟に訴訟費用をかけるのではなく、エンターテインメント・ロイヤーズ・ネットワークの人脈を活かして社内の知財管理体制整備の専門家を雇って、出版社によくありがちな契約の不備や著作者人格権保護不備を防ぐためのシステムを構築することにお金をかけてほしい。そしてそのノウハウを他の出版社にも伝えてほしい。マスターキートン事件の二の舞はもうたくさんなんだ。

(そして、おそらく本件では和解はなされないであろうことを考えれば、『金色のガッシュ!!』が絶版になる可能性も高い。版権は雷句先生の次の仕事先の企業に移されるだろうが、新しい版の単行本になるにあたって、本の内容が少し変わったりするかもしれない。記述が増えるのは歓迎なのだが、新しく版を作り直すに当たっては、しばしばおまけ的な部分が削られることも多いことから、不安もある。小学館からは愛蔵版なども出ないだろうから、愛蔵版待ちの人はとっとと買ったほうがいいだろう)

追記:
ふと思った。出版社は週刊誌の記事などについて名誉毀損で訴えられることに慣れていると思うが、名誉毀損で訴えることには慣れているんだろうか?慣れているとしても、いつも名誉毀損スレスレだったり名誉毀損そのものだったりといった行為をしている出版社の側が、名誉毀損で訴えを起こしたとしてもあんまり説得的な訴訟はできなさそうな気がする…だとすれば、小学館の側が名誉毀損の訴訟を起こす可能性はかなり低そうだ…。
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コメント

6月11日に出た小学館側の情報によれば、どうも小学館は訴状中の表現については不満があるようだからもしかしたら名誉毀損訴訟もありうるのかな?

  • 2008/06/12(木) 21:55:07 |
  • URL |
  • 超伝導ET #-
  • [ 編集]

何だか、色々なところを見て回ったのですが、契約関係や原稿の扱いがルーズなのは必ずしも小学館には限られない、という印象を受けました。
なぜこのような状況が今まで放置されてきたのでしょうか。

  • 2008/06/12(木) 22:34:03 |
  • URL |
  •   #-
  • [ 編集]

私は部外者なので良くわからないのですが、一般に、新たにコストをかけるように組織を変更するのには大きな労力が必要とされるものなのです。
コストをかけなくてもなあなあで事が処理されてきたと言う今までの状態が、出版業全体の契約関係のルーズさを作り出してきたのかもしれません。

  • 2008/06/15(日) 11:52:31 |
  • URL |
  • 超伝導ET #-
  • [ 編集]

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