ナカノブひとりぼっち

(日常はあっけなくデストロイされちまった!)

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2008年度上半期、中延文学会で選ばれた漫画たち

中延文学会ではお盆前とお正月前に『他の人にも読んでほしい漫画』を選出し、他の会員に薦めあうという活動を行っている。各自のお盆休み、正月休みを有意義に過ごそうという趣旨ですね。

選出基準は
①読んだ甲斐があったこと:
(面白い・面白くない、だけではなく、つまらなくても考えさせられた、などなら選ばれる)
②2008年上半期に読まれたこと:
(出版年などは一切関係なし。会員によって2008年上半期に読まれたこと)
の二点のみ。

そして以下の漫画たちがお互いに薦めあわれたのであった。
この文章をお読みの皆様も是非、書店で探してみられるとよろしいかと思います。

①青山景『SWWEEET』(全二巻。2005年に一巻が発行されている)

双子の弟をめぐるトラウマに直面していく兄の話、といえばいいのだろうか?
主な登場人物は双子の兄(ススム)、双子の弟(ツトム)、そしておさなじみの女の子(さくら)。みんな14歳。物語の主軸は双子の弟、ツトム。10歳のときに姿を消し、12歳のときにススムの映った鏡の中に再び出現するようになった-そしてそれはススムだけが知っている。

ススムはおさなじみの女の子、さくらのことが好きで、守ってやりたいと思っているのだが、さくらは女子のグループから陰湿ないじめを受けていて、しかも好きなのはツトムの方…

ススムはさくらとの間で起こった事件から、ツトムのことについて思い悩み、またさくらもススムと共に、ツトム失踪のことを調べ始める。特にこの漫画で面白かったのは全二巻のうちの2巻目。真相が明らかになりつつあるその過程、そして真相に対してどのようにススムとさくらが向かい合っていくか、ということが描かれる部分だ。14歳が描かれる漫画だが、14歳のときに読んでおきたかったような気がしないでもないし、今だからこそわかるキャラクター達の悲しみがあるような気もする。

絵に関しては、一種の少女漫画風のようだが、線には強さがあり、すごく好きだ。

②石黒正数『ネムルバカ』(全一巻、2008年)

同じ女子寮の同じ部屋に住んでいる先輩と後輩。先輩はバンドをやっていてメジャーデビューをめざしている。それに対して、後輩の方は平凡でモラトリアムな大学生活を送っている…

その舞台設定は青春群像劇そのものって感じだが、先輩がメジャーデビューに近づいていく様、先輩と後輩が愛すべき馬鹿っぽい大学生活を送っている様(まさにこういうのをモラトリアムっていうんだろうな)、後輩とその男友達たち、そして外部者としての先輩、が何か悶々とした生活を送っている様は多くの人の共感を呼ぶような風景だったのではないだろうか。

そしてもちろん、ミステリ好きの石黒正数らしく、物語にはちょっとした仕掛けがあって、読者の読後感を爽やかにしたり面白さを持続させたりしてくれる。

石黒正数の『それでも町は廻っている』が好きだったらまずこの漫画を読んで後悔することは無いはず。

③尾玉なみえ『アイドル地獄変』(全一巻、2003年)

尾玉なみえは『アイドル地獄変』以前にも異彩を放つギャグマンガを描いていた…『少年エスパーねじめ』など。『純情パイン』に漂うへんなエロスはなかなか忘れがたい。だがしかし、『アイドル地獄変』の異彩っぷりはそれらの比ではない。この漫画の面白さを言語で説明するのは至難の業だが、あえてこの漫画の面白さをピックアップするとすればそれは言語的なセンスと異様なシチュエーション設定だろうか。『謎の生物も納得 つえはやっぱりがんこつ堂』というCMを撮るシーンなどは呼吸困難になるほど面白かった。

古賀亮一と石田靖とラーメンズを混ぜたらこんな感じになるだろうか?

④小箱とたん『スケッチブック』(現在4巻プラス出張版が出ている、2003年に第一巻)、小泉真理『ジンクホワイト』(単行本では全三巻、文庫では全一巻。2001年に第一巻)

前者『スケッチブック』は美術部もの。後者『ジンクホワイト』は美術大学を志望する受験生の話。どちらも美術に参加する高校生達の話。

『スケッチブック』で描かれる美術部の話は、ゆったりとした人々がゆったりと作品制作に勤しんでいる風景を描いたものだから、いうまでもなくのんびりとした空気がただよっている。舞台となっている九州の田舎(おそらく田舎…といっていいと思う)の風景や美術部の個性的な人々の姿がコメディックな空気をもたらしている。変なところに目をつけるキャラが多いのだが、それは作者の性格なのかな?

それとは対照的なのが『ジンクホワイト』だ。主人公は真木、高校二年生。美術系の大学を志望している。美術大学を受験する話なだけあって、その話の中心的な場面は画塾。画塾って何かというと、美術の実習をするための予備校みたいなところ。デッサンをしたり、油絵の練習をしたり…画塾のシーンが多いのは、主人公が高校生活に幻滅しているからでもあるようだ。真木は高校を途中で転校してくるのだが、美術科に入りたかったのに、入れられたのは転校生と素行の悪い生徒ばかりのクラス。せめて美術部に入ろうと思ったのに、自信のあった絵を教師に『マニュアル絵』だと言われたりしてへこむ…など、『スケッチブック』と比べるとあまりにも殺伐としている。

しかし、この漫画の面白さは、そうした殺伐を経て、絵の勉強に打ち込むようになった真木が、あるとき突然デッサンが取れるようになるシーンの持つ、パッとプレッシャーが取れて視界が開けたような爽やかさや、あるときはじっとり、あるときはいきいきして見える画塾での活動などを通して確実に成長しているさまにもあるだろう。

また、本作を語るにあたっては、真木の一年後輩で美術科に在籍している和田の存在を外せない。真木と和田との初々しい…という形容詞が妥当なのだろうか…ラブストーリーなどは、なんかこう、いかにも青春って感じだ。あれ、なんか『青春』って単語を使いすぎかな。青春に焦がれているのだろうか…でもいいや、実際、青春って感じなんだから。

⑤谷口ジロー『犬を飼う』(全一巻、単行本が出たのは1992年、文庫初版は2002年、2008年の第4刷が出ているので今は入手しやすいはず)

谷口ジローは近頃、『孤独のグルメ』でネット上の話題を呼んでいるが、孤独のグルメを執筆していたのとあまり時代の違わない1991年、ビッグコミックに掲載されたこの表題作のほうが、谷口ジローの真骨頂というか、面白さを如実に表している作品ではないだろうか。…そりゃ『孤独のグルメ』の方は原作つきなんだから当たり前といえば当たり前だけど。

1980年代において、谷口ジローの精緻な絵柄は、主にアクション色の強い劇画的な絵でより多く用いられていたが、1990年代ごろからは日常を描くための絵柄として活用されていて、そしてそれは成功していたようだ。

本作『犬を飼う』において、特にドラマティックな出来事は起こらない。派手さはない。起こることは、一言でいえば『老犬の死』だろうか。老犬が身体を悪くし、そして死ぬまでのことを描いた40ページの作品だ。ただ、克明で、リアリティがあり、それだけ読者の心に訴えかけるものが大きい。純粋に老犬の死について考えさせてくれる。

なお、本に収録されている話は暗いばかりの話ではなくて、猫を飼う話や親戚の中学生の女の子を預かる話など、明るくて希望のある話もある。少なくとも、『犬を飼う』の本を通読して、何も得るものが無かったという人はおそらくいないだろう。

⑥石塚真一『岳』(2005年第一巻が出てから、現在も連載中)

山登り中に遭難した人を救助する人の話。主人公は警察などの組織に属しない、たんなるボランティアとして救助を行っている。特筆すべきは、主人公はヒーロー的な身体能力などをもちあわせているが、救助が失敗に終わることもとても多いということだ。安易なヒーロー物ではない。

救助される人々は、様々な思いを抱えて山に登った人であり、陥る遭難のかたちにも様々なものがあり、助ける側にも様々なドラマがある。そのドラマを描いたものが本作だといっていいだろう。

それにしても…随分たくさんの人が救助される途中、あるいは救助される前に亡くなるように思える。その状況に耐えられる山岳救助ボランティアに携わる主人公の精神力は並大抵のものではないだろう。どのようにしてそのような精神の境地に立ったのか、などと考えると、より一層面白く本作が読めるかもしれない。


ほかにも、『帯をギュッとね!』の面白さを再発見したとか、『県立地球防衛軍』がやっぱり面白いとか、はたまた竹本泉はいい漫画家だとか…いろいろな声があった。読むべき漫画には数限りないようだが、全ての紹介をすることはできない…

ではみなさん、よいお休みを。
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コメント

何と言えばいいのか、
結構個性的なリストになったね。

映画でもこういった奴をやってみようかな。

  • 2008/08/17(日) 09:33:44 |
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