ナカノブひとりぼっち

(日常はあっけなくデストロイされちまった!)

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ファンの態度についての諸見解

最相葉月の『星新一 一〇〇一話をつくった人』の中にこんな部分があった。

(11月25日追記:コメントでの指摘を受け、本腰を入れて本棚を掃除したところ、本を見つけたため、訂正し、加筆した)

星新一のファンクラブ、『エヌ氏の会』の代表である林敏夫氏は、ファンクラブの会報に批判的な記事を書いた会員に対し、抗議文を送ったことがあるとのこと。

林氏の見解の要旨は、おそらく以下のようなものだろう。
上の本のP.484中ごろ。

『ファンクラブとは、その作家がいかなる状況にあっても変わりなくエールを送り、支え続ける応援団のような存在である。たとえ会心の作とは思えなくても、作家の生理を理解し、静かに寄り添い快復を待つ。流行っているから読んでみたという、にわかファンとはまったく異なる。不満があって、ルールが守れないなら、脱会すればいい。』


私はこの見解に若干の違和感を感じた。批判的な見解なしに批評なんてありうるものなのか。上記の見解によれば、ファンは作品についてポジティブな意見しか述べてはならないということになる。作品がつまらなくても褒めるべきなのか。林氏の見解もそこまでは言ってはいないようにも思えるが、作品がつまらなくても褒めるべきであるとする見解があるとして、仮に、その見解を①ファン・ポジティブ説と名づける。

しかし、ファン・ポジティブ説にも一理なくはない。作家に「最近の作品はつまらないですね」といってもモチベーションが上がってよい作品を書いたりするようになるというものではない(物書きの作業はサラリーマンの営業成績なんかとは違うことだろう)、だとすれば作家の精神をポジティブな状態に保つことが作家が良作を生むことができる環境につながり、結果としてファンも喜ぶ、という循環が想定されているのだと思う。

この説に対して、ファンの発言につき、面白かったら面白いといい、面白くなかったら面白くないというべきだという見解―これを仮に②ポジ・ネガ説と名づける―があるだろう。ごく自然な読者のそれであり、読者ならこうあるべき気がする。私も当然こうだと思っていた。

そう思っていたのだが…上記二つ以外にも見解があるようだ。私の友人が提唱する説は以下のようなものだ。

ファンといえども対価を払って作品を読む読者である以上、自由な発言が許されてしかるべきだ。しかし、真摯なファンならば、作家がよい作品を生み出すことができること、そしてその作品を享受できることこそを最上の喜びとするべきだ。だとすれば、作家が前向きな精神状態になり、良い作品を生み出すことができるようになるべきことがもたらす利益が、ファンが自由な発言をなしうる利益に優越する。

したがって、ファンは作品を褒める意見は積極的に行うべきだが、ネガティブな意見はあまり公にするべきではない。具体的には、作品が面白かったら褒め、作品が面白くないときはじっと耐えて何も言うべきではない、とする―これを③ポジ・ゼロ説と名づける―。


なるほど。こういわれてみると、なんだか③ポジ・ゼロ説には一理あるような気がしてこないでもない。

これらの説の違いは、ファンに一般の読者と異なった義務(つまらない、という批評をすることを差し控える義務)を認めるか、認めないかという点で違いが出てくる。もっとも強くその義務を認め、かつ、つまらない作品であっても褒め義務までも認めるのが①ファン・ポジティブ説であり、まったく認めないのが②ポジ・ネガ説であり、その中間説が③ポジ・ゼロ説ということになる。

上記の林氏の見解におけるファンクラブの会員についての『にわかファンとはまったく異なる』という認識は、まさにこの点を踏まえたものだろう。にわかファンとは異なるファンクラブの会員は、作品についてネガティブな批評をしないという不作為義務を負う、ということが氏の見解の主眼なのだと私は解釈している。

どの説が妥当かということは一義的には決めがたいだろう。
個人の性格によるんじゃないだろうか。

また、作家の性格にもよりそうだ。島本和彦は『吼えろペン』のあとがき部分で編集者の仕事は作家をいい気分にさせること、と述べていた気がする(これも本がどこにあるかわからないのではっきりいえないのがもどかしいところだ)。そのような作家のファンにはより強く「ファンはネガティブな批評をするべきではないという義務」が認められやすくなるだろう。

ただ、ファン倫理としては③を採る人が多い気がする…統計をとったことなんてないので個人的な感想だけれども。とくにミステリ作家とか少女マンガ家とかについては、ファンは③で行くべし、という雰囲気が確かにあるかもしれないね。


追記:
理論的には常に作家を厳しく批評する④ファン・ネガティブ説というものも考えられるが、たぶん作家というのは体育会系の精神構造を持ってなさそうだしなあ、実際にこういうことをする人がいるとは考えにくい。映画評論家とかはこういう人もいるけど。

追記2:
本棚、掃除します。

追記3:(11月25日)
本棚、掃除しました…が、まだ中途です。
コメントでご指摘くださったケチャンさん、どうもありがとうございました。
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コメント

エヌ氏の会の見解

はじめまして。「星新一」を読んで検索できました。ぼくも本は読みましたけど、誤読されてるんじゃないかな? ファンなら作品がつまらないというべきではない、といったのは著者の最相葉月ではないですよ。エヌ氏の会の見解を書いたのだと思います。

  • 2008/11/24(月) 11:51:29 |
  • URL |
  • ケチャン #khd3JtVo
  • [ 編集]

>ケチャンさん

どうもわざわざコメント・ご指摘いただいてありがとうございます。

なにぶん上記の見解は本を確認せずに書きましたため不確かだなあと自分でも思っていたのですが、やっぱり間違っていましたか…

申し訳ございませんでした。
訂正しておきます。

  • 2008/11/24(月) 13:05:06 |
  • URL |
  • ファンの一人 #-
  • [ 編集]

>ケチャンさん

本日、本を実際に探してチェックしてみたところ、ご指摘のとおりでした。

ご指摘いただいたことで早くから文章を訂正することができました。ありがとうございました。

  • 2008/11/25(火) 22:04:04 |
  • URL |
  • ファンの一人 #-
  • [ 編集]

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