ナカノブひとりぼっち

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現在、日本の自衛隊が保有する銃は三分の二が旧式…武器輸出を伴う調達 第三回

前回に引き続き、武器輸出を伴う防衛調達の可否について論ずる。
今回は総合的な利益考量を行い、まとめとする。


 前回までの検討から、市場その他の状況が整い、かつ議会がそれを許せば、武器輸出を伴う防衛調達が実際に行われる可能性もありうるとしてよいだろう。
 しかし、武器輸出を行うか否かという問題は、単なる法律上の問題ではなく、高度に政治的な問題であり、結局は広範な産業政策上の選択の問題に置き換えられるだろう。
 そこで、武器輸出によって発生する諸利害の総合的な考量が必要になる。

一、武器輸出を伴う防衛調達がもたらす利益について
 武器輸出を伴う防衛調達によって発生する利益として以下のようなものが考えられる。
(1)大量生産による武器調達コストの低減
(2)大量生産体制の構築による防衛上の要請の充足
(3)武器輸出による収益
 以下、それぞれについて検討する。

(1)大量生産による武器調達コストの低減
 例えば89式小銃の調達価格が一丁当たり約347,354円と前述のとおりAK74に比べて非常に割高になっているのは性能の差ではなく、生産形態に起因するものだとすれば、大量生産によって一丁あたりの価格が下げられるはずである。
 仮に一丁あたりの調達価格をAK74と同程度まで下げられたとすれば、7,000丁の小銃を調達したとき21億円ほどのコスト削減になる。
 もちろん、大量生産によってコストを削減しうるのは小銃だけではなく、幅広い範囲の武器に及ぶため、コストを下げられる武器の種類は多岐に亘るだろう。

(2)大量生産体制の構築による防衛上の要請の充足
 ここでも小銃を代表にとって、検討してみる。
 自衛隊に配備されている小銃の総数が210,000丁なので、62,241丁に過ぎない89式小銃は全体の三割弱にしか配備されていないことになる。
 武器輸出を伴う防衛調達によって小銃生産能力を上げれば、新式の小銃の配備がより迅速に行われ、教育、弾薬の確保などの問題がよりシンプルになるだろう。

(3)武器輸出による収益
 武器輸出によって収益を得るのは防衛省ではなく民間企業だが、新たな市場への参入によって日本の企業が収益を上げるチャンスを得ることができるだろう。
 もっとも、日本の小銃を購入する国がどれほどあるかについては疑問が残る。
 かつて社会主義国だった第三世界の国々ではほとんどの国が旧ソ連のカラシニコフを既に調達しており、日本の小銃が参入する余地はあまり無いかもしれない。
 よって、日本の小銃の輸出先として考えられるのは東南アジアの国々だろうか。旧共産圏でない国、例えばマレーシアやインドネシアなどならば輸出先となりうるだろう。
 だが小銃以外の武器も輸出すれば収益を上げられるだろう。特に光学器械など日本の技術に定評のあるハイテクを応用した武器は大きな需要があると考えられる。

二、武器輸出を伴う防衛調達がもたらす不利益について
 武器輸出を伴う防衛調達によって発生する不利益として以下のようなものが考えられる。
(1)国内世論の反発
(2)周辺諸国との外交上のマイナス
 以下、それぞれについて検討する。

(1)国内世論の反発
 日本は敗戦国であり、憲法9条では戦争放棄をうたっており、国民の反戦感情は非常に強い。武器輸出が今までなされなかったのも、輸出の必要が大きくなかったことに加えて、この理由が大きいだろう。
 厳密に言えば武器輸出の解禁は戦争(国際紛争)と必ずしも直接つながる政策ではないのだが(テロ対策など保安のための需要も存在する)、一般国民には武器とは戦争を引き起こすためのものであると向きも多いだろう。
 ここで武器輸出三原則における武器の定義を示しておく。武器輸出三原則における「武器」とは、「軍隊が使用するものであって、直接戦闘の用に供されるもの」をいう 。日本国民に「軍隊が使用するものであって、直接戦闘のように供されるもの」の生産を拡大し、他国に輸出しようとしたところで、産業政策としては、国民にどの程度受け入れられるか疑問が残る。
 前述のとおり、武器輸出は政府の裁量判断によって決定される問題であり、武器輸出を政府がどのように取り扱うかは世論如何によるところが大きく、国内世論の反発が大きければそのまま武器輸出は政策として選択されなくなる可能性が高い。また、国内世論を収集させるための政治的コストが高くなれば、それを克服してまで武器輸出を解禁しようとする国会議員もそう多くはないだろう。

(2)周辺諸国との外交上のマイナス
 武器輸出を伴う防衛調達の実施はある面で防衛力の強化に他ならない。そして、防衛力の強化はほぼ例外なく周辺諸国にプレッシャーとして働くだろう。周辺諸国の反発はかなり大きくなることが予想される。
 また、既に武器輸出をしている国にとっては日本の国際兵器市場への参入は競争の活発化につながる。その兵器市場が寡占市場を構成している場合、新しい経済主体の市場への参入はドラスティックな価格引下げを伴うことがあることから、この点からも周辺諸国との外交関係にはマイナスに働くと言えるだろう。
 加えて言えば、日本は国際世論において、平和主義を主張することにより一定の地位を獲得してきたともいえるから、武器輸出を行うことでその地位を失うことになる可能性もある。

三、利益考量の結論
 現在の日本の諸状況を鑑みるに、現段階で武器輸出を伴う防衛調達を行うには国内世論を中心にあまりにも障害が多い。そしてその障害を克服するためには防衛に懸かるコストの削減を主張してもあまり効果が期待できない。世論はあまり防衛に懸かるコストには興味は無いように思えるためだ。防衛関係費、特に装備品等購入費はここ数年8000億円を超えない程度に留まっており、また、多くの日本人にとって日常生活とかけ離れた分野である防衛についてはあまり具体的なイメージが湧かないためだろうか。
 加えて、武器輸出を伴う防衛調達の利点として防衛上の要請を充足できるという点があるにせよ、日本の国際社会での地位を省みるに、小火器による防衛力の整備を図るべき緊急の国際問題があるわけでもない。例えば、北朝鮮の陸上部隊が上陸してくるとは考えにくい。むしろ今注目されている防衛分野は弾道ミサイル防衛(BMD)など、より大掛かりでより大局的なものだ。ましてや、小火器を用いて解決される国内問題があるわけでもない。テロの脅威が高まっていると言われるが、日本におけるテロは、イラクやアフガニスタンのように武力集団が小銃を手に行うものではなく、公共の施設に爆発物や化学兵器を仕掛けるような、警察力が中心となるものだろう。
 よって、結論としては、現代の日本は政治的選択として武器輸出を伴う防衛調達を行う必要は無いといえる。

 追記として、代替案についても考察する。
 武器輸出を伴う防衛調達以外の方法によって装備の充実を図ろうとするならば、諸外国と共同して一種類の制式装備を採用するという方法が考えられる。例えば日本、韓国、台湾など地理的・政治的に近い立場の国々と防衛協定を結び、装備の開発技術や生産設備、特許を共有するのである。
 この方法ならば自国での装備開発で開発技術力を保つことも、コストを下げることも同時に行うことが出来る上、防衛戦略上も他国との強い結びつきが形成され、有意義である。なお、兵器は自国の風土や環境、政治事情にあったものの開発が要請されるため自国単独での開発が望ましいとも言われるが、防衛戦略がグローバル化した今日において『自国の風土や環境、政治事情』下においてしか活躍できないような兵器ではそもそも防衛上不適格であると言えるだろうから、この点は現代の防衛においては問題にならないだろう。
 ただ、この案を実現させるためには当該防衛協定を締結するだけの深い国家間の結びつきがあることが前提となる。防衛のための装備の開発は各国ともに戦略的に重要な秘密を含むものであり、そのような秘密を共有するだけの外交的信頼関係がなければこのような協定は締結することができないだろう。よって、この案は理想的であるかもしれないが実現させるには高いハードルが存在するといえるだろう。
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テーマ:国家防衛 - ジャンル:政治・経済

コメント

やっと書き終えられた…

しかし最後に書いた『他国との共同兵器開発』は本当に実施される可能性があるそうだな。
どこの国とやるんだろう…?
韓国とかか?あるいは台湾とか…
まさか中国ってことはないだろうし。
あるいはEU諸国…

  • 2007/01/10(水) 12:48:22 |
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  • 団藤 #-
  • [ 編集]

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